ウルトラマンA
第4話
3億年超獣出現! (核心)


1972年4月28日放送 円谷プロダクション制作
監督:山際永三 脚本:市川森一
出演:清水紘治、西恵子、瑳川哲朗、佐野光洋、高峰圭二、星光子、ほか

ケッコン? 冗談はやめてよ。


清水紘治の本当の凄さは、むしろ後半だ
(まじめにレヴュー:{}内は、わたにゃんの解釈)

 昏睡状態にある古生代後期の魚類が発見され、移送の護衛の指令を受ける、山中(沖田駿一)、北斗(高峰圭二)、南(星光子)隊員。
 ナレーション(岸田森)。同日、美川(西恵子)隊員は、中学時代の同窓生で、有名劇画作家の久里虫太郎(清水紘治)の邸を尋ねる。同窓会らしい。「偶然だったわね、一昨日、デパートのあんな人ごみの中で、会えるとは思わなかったわ。」と美川。「君に会えたのは、偶然じゃないよ。ぼくのテレパシーが通じたんだ。」と、黒い線の入った白ジャケットの虫太郎。大人っぽく笑う美川。オブジェが怪しい室内。「おぼえてるかい? 卒業式の日、ラブレターを渡したら、その場で封も切らずにつっ返された。」 「まあ、そんな失礼なことしたの、あたしが。」 「ぼくは忘れていないよ。これがつっ返された手紙だ。」 「まあ、まだ持ってらしたの、あんな昔の手紙を。」 「いつか、君の手で開けてもらおうと思ってね。ぼくは、執念深い性格なんだ。」 手紙を開ける美川。ダーツを的に撃ち込む虫太郎。「ガラン」の画と「この絵を あなたに ささげます。」とだけ書いた手紙。{ これが、一種の呪縛となり、後で、美川を苦しめる。 } 「古生代後期、デボン紀に生きてた魚類にヒントを得て描いたんだ。これでも、3日間、学校を休んで描いたんだぜ。」 劣等生だが、絵だけが得意だった虫太郎。{ ここまでは、ちょっと変だが、常識の範囲。失恋の経験のある男子には、共感すら呼び起こすであろう。 }
 山中、北斗、南、魚類の移送に出発。久里邸。タバコを吸い、酒を飲む虫太郎。感心しつつ、虫太郎の原稿を読む美川。「トラックが空へ舞い上がっちゃうのね。」 すると、魚類を積んだトラックが舞い上がる。なす術のない山中たち。再び、久里邸。「ところでみんな遅いわね。あれからまだ、誰も来ないわ。」 「誰も来ない。」 「え?」 「招待したのは、君ひとりだもの。ふたりだけの同窓会じゃ変かな。」 { 次第に、異常な本性を現す虫太郎。} 「あなた、どうしてそんなウソを。あ、あ……。」 「そろそろ効いてきたようだね。」 苦しむ美川。不敵に笑い、狂喜する虫太郎。 { こういう人物を実に自然に演じてしまう清水紘治、恐るべし。 }
 連絡のつかない美川を心配する吉村(佐野光洋)隊員。魚類を奪われ非常態勢に入るTAC。山中、吉村は、美川の消息を追う。隊長(瑳川哲朗)、今野(山本正明)隊員、北斗は、現場上空のパトロール。南は、残って通信任務。タックファルコン出撃。{ ……無音。ワンダバが欲しい。 } タックパンサーも出撃。{ 小太鼓が小さく鳴る。 } 「人間を滅ぼすのは人間だ。人間を滅ぼすためには人間を利用することだ。闘え、久里虫太郎。破壊し尽くすのだ、ガラン。」と異次元人。空が割れて、ガラン出現。「さらわれた古代生物、そっくりです。」と北斗。闘うTAC。タックアローで飛び立つ北斗。ガランの角が光り、アローもファルコンも操縦不能に。{ ヤバい音楽が流れる。 } 街を避けて着陸。タックガンも弾が出ない。が、久里虫太郎の消しゴムで、唐突に消えるガラン。
 執筆してた虫太郎は、上を見て何か考え、ジャケットを脱ぐ。天井裏。縄で縛られたワンピースの美川を脚から舐めるカメラ。もがく美川。「あ…。」と云って、口で通信機を操る。{ むちゃくちゃエッチっぽい。 } が、通信不能。虫太郎登場。「久里さん、何でこんなバカなことするの?」 「そんな怖い顔しないでくれ。これでもぼくは君が好きなんだ。中学の時からずうっと好きだった。」 「一昨日、偶然会っただけで、何言ってるの。」 { 完全に、成人変態ドラマ。 } 通信機を蹴飛ばす虫太郎。不敵な虫太郎を下から見上げるカメラ。{ まるで、怪優クラウス・キンスキーだ。 } 「偶然じゃないと言ったろ。ぼくは悪魔からテレパシーをもらってるんだ。」 美川を起こし、肩の辺りを揉みまくりながら、テレパシーの解説をする虫太郎。{ 子供が観ても良いのかしら? } 「好きな人に会いたいと思えば会える。嫌いなヤツが死ねば良いと思えば、そいつはきっと死ぬ。」 「信じないわ、そんな恐ろしいこと。」 「今に分かるさ。」 「あたしをどうする気なの。」 親指と人差し指で美川の顎をつかみ、「君は、ぼくとケッコンするんだ。」 「ケッコン? 冗談はやめてよ。」 美川を突き飛ばす虫太郎。{ 変態の世界だが、ケッコンにこだわるところに古典的な味わいがある。刹那的な快楽を超えた欲求なのだ。 } 「しかし、あんまり意地を張りすぎて、前の人みたいにならないようにね。」 懐中電灯が照らす、女の白骨死体。{ 高校の時に好きだった女か??? } ビビる美川。{ TACの隊員だけに、悲鳴を上げたりしないのが理にかなっている。 } また、怪しく笑う虫太郎。CM。
 作戦室。計器に異常がなかったことから、精神感応(テレパシー)による遠隔操作を疑う隊長。
 ナレーション(岸田森)。久里邸を探しあてた吉村。ぬいぐるみに矢を撃ち込む、クリーム色のシャツの虫太郎。美川は帰ったと言う虫太郎。去りかける吉村。「TAC。今に皆殺しだ。」と虫太郎。縄を解き、ブローチの爆弾でドアを破壊する美川。気づく吉村。逃げる美川を虫太郎の矢が襲う。{ 息が荒く、どこまでもエッチっぽい美川。 } アーチェリーでねらう虫太郎に美川のチョップ&キック。ひるむ虫太郎。吉村登場。矢で突くが、かわされ、階段から落ちて失神する虫太郎。逃げる美川と吉村。{ 吉村は、美川をかばっていて、先に逃げないのが良い。丁寧な演出。 }
 作戦室。「とにかくあいつは異常ですね。」と吉村。「(超獣を動かしているのは、)ひとりの人間の心に渦巻く、欲望執念、そして妄想だ!」と隊長。{ つまり、性欲か。そもそも、「妄想」と言う言葉の暗躍が、子供番組ではあり得ないかも。 } 「いずれにしろ美川隊員は、当分ここから出ない方が良い。」と隊長。何か動揺してる美川。
 タバコの煙を立ち昇らせ、ガランを描く、迷彩服の虫太郎。「ガランよ、彼女を連れ戻せ。邪魔するやつらは、ひとり残らず叩き潰せ。」 応えるガランの声。再び、街に出現したガラン。出撃しようとする{ 完全に、主役と化した }涙目の美川。 制止する{ 存在感が薄すぎる }北斗。「ガランは、あたしを追ってきたのよ。あたしは闘うわ。」 { ついに、温存されてた }ワンダバが流れる。 ガランのテレパシーを恐れ、地上攻撃で闘うTAC。勝手に、アローで出撃する美川。アローで追う北斗。描きまくる虫太郎。ガランを攻撃する美川。再び、ガランのテレパシー攻撃。ガランに捕まった北斗。ナレーション(岸田森)。駆け出す南、驚く隊長。「星司さ~ん。」 指輪が光る。「夕子~。」 アローを脱出し、「フライング・タッチ!」と北斗。
 エース登場。原稿をまき散らし、描きまくる虫太郎。が、エースのタイマーショットがガランの右腕を吹き飛ばす。絶叫する虫太郎。{ 右手は、劇画作家の弱点だったのだ。 } 悶絶する虫太郎と舞い飛ぶ原稿。燃える原稿、燃えるガラン。虫太郎のうめき声。{ ここで、ありがちな成人変態ドラマを超え、幻想性を帯びた、特撮の画となるのだ。清水紘治のネガティヴな魅力が炸裂! } 既に戦闘能力を失ったガランに、メタリウム光線。{ まさに、情け無用! } 爆発炎上する久里邸。{ 虫太郎が爆発したのか??? 凄絶な最期だ。 }
 作戦室。虫太郎の遺したガランの画を見る、晦渋な表情の美川。「古生代の小動物をあんな超獣に作り変えたのは、異次元人じゃない。あれは人間の欲望妄想の産物だ。」と隊長。{ その背後に立つ山中の神妙な表情が良い。今野だったらNGなのだが。 } 爽やかな顔でライターを手渡す吉村。うなずく美川。ガランの画を焼き捨て、吹っ切れたように明るく笑う美川。微笑みあう北斗と南。


ツッコミどころ

  • 虫太郎が、おしゃれっつうか、キザ。3種類の服で決めてみせる (≧∇≦)
  • 魚類の護衛に3人??? 特に影が薄い、南の出番を作ってやってる感じ。
  • 実戦向きではない、2ドアのタックパンサーの後部座席から、すばやく降りてみせる南。
  • 今野に、怪奇漫画家と言われてしまう虫太郎。劇画作家のハズだが ( ゚∀。)
  • 操縦不能になり、街を避けて着陸するアローとファルコン。完全に制御不能ではないらしい。
  • 美川をいじりたくなった虫太郎がガランを消しゴムで消したので、ピンチを脱したTAC (*´∀`)
  • 美川のぱんちゅが見えそうで見えない、痛恨のカットが多い (ノд`)
  • 「うむ、間違いない。何者かの強力な霊の力が我々の戦闘を妨害したんだ。」と隊長。終始、隊長の推理(=解説)で話が進む。
  • 岸田森のナレーションが実に淡々としているのは、虫太郎と隊長に遠慮してるのか??? クラウス・キンスキーだったら暴れだすところだが、日本人は、怪優であっても、礼節をわきまえるのだ(例外あり)。
  • 虫太郎が普通のマンガ家の数百倍の速度(推測)で原稿を描けるのは、異次元人が超能力を与えたのか。
  • 古代魚類が発見されるなり、前から眼をつけてた虫太郎に出番を与えた異次元人の情報収集能力、そして、報酬を忘れない精神も素晴らしい。
  • 主役は、虫太郎と美川。北斗は、吉村よりも、はるかに影が薄い。冷徹な演出とも言える。

わたにゃんが感情移入した人物

 「いっそダメになってしまえたら。」と言う思いで、虫太郎に共鳴した。


ふと思ったこと (*´∀`)

 清水紘治の怪演と西恵子の熱演&お色気(死語)が見所だが、ストーリーにヘンな難解さはなく、実に分かりやすい作品である。山際永三の監督作品では、例えば、『帰ってきたウルトラマン』のテロチルスの回の方が難しい。しかし、本作の別の魅力は、虫太郎の欲望の具現としての超獣ガランの存在理由が明確な点だ。『帰ってきたウルトラマン』では、人間ドラマは秀逸だが、怪獣の存在理由があいまいな作品も見受けられた。ただ、本作でも、虫太郎が人類を憎んでいるらしい(?)理由は、想像するしかないのだが……。


  Ver. 0.12 2011年06月05日29時52分頃、完了。


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