ウルトラセブン
第37話
盗まれたウルトラ・アイ (核心)


1968年6月16日放送 円谷プロダクション制作
監督:鈴木俊継 脚本:市川森一
出演:森次浩司、吉田ゆり、中山昭二、石井伊吉、古谷敏、阿知波信介、菱見百合子、ほか

こんな狂った星を? 見てごらんなさい、こんな星。 
 侵略する価値があると思って?


望郷
(まじめにレヴュー:{}内は、わたにゃんの解釈)

 発光する飛行物体が着陸する。ポインターで調査するフルハシ(石井伊吉)とアマギ(古谷敏)。飛行物体の落下地点が確認できない、作戦室のソガ(阿知波信介)に、「だからコンピュータがあるんだろ。お前みたいなウスノロが、よくもウルトラ警備隊員になれたものだ。」と{ 先輩を罵倒するが、気弱さも漂う }アマギ。フルハシの提案で、警察からの連絡をたよりに探すことになる。ダンプとスレ違うポインター。ダンプを運転するのは、美少女(吉田ゆり)である。{ 本編では全く名乗らない少女。このレヴューでは、仮に、まや子と呼ぼうと思ったが、ファンのヒンシュクを買うのでやめました。 } 「おい、今の女に見えなかったか?」とフルハシ。「ああ、いかす女の子だった。」とアマギ。{ 大先輩のフルハシにも、ため口か。 } にやける二人。「ちきしょう、ダンプなんて運転しやがって。」とフルハシ。笑うアマギ。{ 明らかに怪しいのに、想像力はないのか??? よくもウルトラ警備隊員になれたものだ、こいつらも。 } 飛び去る飛行物体。{ いかにも運転手な }血まみれの男を見つけたフルハシとアマギ。「光の中。ぐっ。女が…。」と言って、気を失う(絶命する?)男。地面に残る噴射の跡を見つける二人。再び、運転する少女。「若い女が運転するダンプが山を下った。検問を頼む。」と、もう1台のポインターのダン(森次浩司)に連絡するアマギ。停車させようとするダンをシカトして、走り去るダンプ。ポインターで、追いかけるダン。飛行物体の光を浴び、崖から落ちるポインター。倒れているダンに迫り、そのポケットに手を伸ばす少女。一瞬、意識が戻るが、また気を失うダン。{ ウルトラ・アイを奪ったのは、シリーズを観てる視聴者には明らかだが、そうでない人には分かりにくいかも。しかし、ピット星人ゴドラ星人に比べると、ウルトラ・アイの奪い方が「豪快」というか「大味」。そこまでやるなら、ダンを殺せた。 }
 プラネタリウム。「皆さんが小さい頃、お父さんやお母さんが亡くなると、お星さまになるなんて、聞いたことがありますね。そうして、みんなが住んでいる、この地球以外にも、まだまだたくさん、この地球と同じ惑星があることを、知っていますね。そこには、我々人間と同じような人間が住んでいるのかも知れません。もしかすると、今、君の横にいる人と同じ人がいるかも知れません。その星から、今頃、地球を見て、何てきれいな星だろうと、我々の地球のことをほめているかも知れませんね。」と解説者。{ 大人の観客もいるが、子供向けのナレーション。キリスト教の牧師のような人を食った語り口で、シュールな味わいがあるので、全文引用。恒星ではない地球が、遠くから見えるのかは疑問。「何てきれいな星」は、後の少女の台詞と対になってるのかも。 } スクリーンを見上げる観客の中に、ダンプに乗っていた少女がいる。手に持った機械を操作し始める。
 ステーションV2。奇妙な電波を捕えた隊員たち。「マゼラン星、マゼラン星、第一任務完了しました。{ 聞き取り困難のため、違うかも知れない。 } 迎えの円盤を送ってください。」と言う女の声。「マゼラン星雲?」とか言ってる隊員。{ マゼラン星雲とは言ってないと思うが… ( ゚∀。) 宇宙語だったのだろうか? } 地上基地に報告する隊員。作戦室。キリヤマ(中山昭二)が応答する。
 別の部屋から出てくるダンとソガ。ダンは手に包帯をしている。「ダン。すまん。オレがもたもたしたために、怪我をさせてしまって。アマギがあんまりポンポン言うもんだから、すっかり頭に来てしまったんだ。」 { 結局、アマギのせいにしてるソガ。 } 「いやあ。うっかりしてたぼくが悪いんです。みんなに心配かけて。」 { 宇宙人でありながら、日本人的な謙虚さをマスターしてるダン。 } 「じゃあ。気をつけてな。」 「ああ。」 立ち去るソガ。胸のポケットを探り、「きっと見つけ出してやる。あの顔を忘れるもんか。」と、心の中でつぶやくダン。{ ここまで、ウルトラ・アイと言う言葉は、全く出て来ない。 }
 作戦室。キリヤマの説明を聞くアンヌ(菱見百合子)とフルハシ。「怪電波の発信源は、K地区のプラネタリウム・センター。おそらく、もういないだろう。見たとおり、娯楽場が多い。隠れ場にはもってこいの地域だ。」 「ボーリング場に、ジャズ喫茶。地下にもぐれば、アングラ・バー。」と{ 妙に詳しい }アンヌ。「こいつは若い子ですね。ダンプに乗ってた子も17~8でした。」と{ 勝手に関連付ける }フルハシ。K地区の全ての電波のチェックを設定するアマギ。「よし、あとは網にいつかかるか。その時を逃さないことだ。」とキリヤマ。
 ナレーション(浦野光)。「3日がたち、その間、怪電波の発信は途絶えていた。ついに4日目の午前2時…。」 はたき起こされたようなアマギ登場。作戦室に入る。他のメンバーは、すでにそろっている。解読機の用意をするアマギ。「隊長。発信源は、スナック・ノアです。」とソガ。{ なるほど、すごい精度で分かるんだ。 } 隊長がうなづくと、出撃するダンとフルハシ。「アマギ、どうだ。」 「確かにマゼラン星に向けられてます。」 「通信の内容は?」 「迎エハマダカ? 迎エハマダカ?」 「それだけか?」 「その繰り返しです。」 「ううむ。…迎えはまだか。」 { コンピュータの吐き出す紙テープを即時解読するアマギ。ビット情報ではなく、英字とかが打ち抜かれてるのかも。 }
 スナック。演奏するバンド、踊る若者たち。射的をする女。{ その無骨な雰囲気が、妙に浮いている }制服姿のフルハシ。{ けっこう粋な }私服のダン。やはり制服のソガとアマギ登場。{ 私服で捜査すべきだが…。 } 踊っているマゼラン星の少女。{ まだ、深刻な状況ではなく、余裕こいて、フンフンと音楽にノッてたら、 }少女を発見し、真顔になるダン。テレパシーで話しかけるダン。「聞こえるか? ぼくが分かるか?」 「誰? 地球人なら、テレパシーは使えないはずよ。」と応え、周囲を見まわす少女。「分かったわ。あなたはセブンね。」 「ウルトラ・アイをなぜ盗った。」 「それが私の任務だから。{ 語尾、不明瞭 }」 「何? 地球を侵略するつもりなのか?」 「こんな狂った星を? 見てごらんなさい、こんな星。侵略する価値があると思って?」 踊りながら笑う少女{ ここがシニカルで良いのだが、「気に入らないから、みな殺しにする」と言うのでは、宇宙の帝王バドー星人と同レヴェルと言う気も…。 } 「迎えはまだか。迎えはまだか。」とダンが語りかけると、何か考え、踊るのをやめる少女。リズム・マシンの音が聴こえる。ダンがそれに気づくと、逃走する少女。「リズム・ボックスです。」とフルハシらに伝え、少女を追うダン。ソガが天井に発砲すると明かりが消える。音楽も消える。{ こういう、あり得ない演出が最高すぎる。 }
 作戦室。リズム・ボックスを調べるキリヤマたち。「これを繰り返し、マゼラン星に送るんだ。」とキリヤマ。「返信が入りました。」とソガ。{ ずっと前の送信の返答が来たのかもしれないが、惑星間でも、短時間でデータの送受信ができる機械のようだ。マゼラン星が意外に近いのか、それとも、怪電波の「怪」に秘密があるのか(ワープするとか)??? } 解析するアマギ。紙テープを読む。「恒星間弾道弾、スデニ発射セリ。迎エニ及ブ時間ナク。」 { 簡単に解読できる言葉で通信するマゼラン星人。やはり、宇宙の帝王バドー星人レヴェル。困ったものだ ( ゚∀。) } 「恒星間弾道弾と言うと、隊長。マゼラン星が地球にミサイルを!」とソガ。「それじゃ、あの娘が…。」とフルハシ。「おそらく、何か特殊な任務を負ってやって来たんだろう。」とキリヤマ。「迎えには来ないって、どう言う意味なの?」とアンヌ。ダンに接近するカメラ。「裏切られたんだよ。自分の星に。」『超兵器R1号』なみにシリアスな }ダン。「隊長、計算の結果、ミサイルの地球到達は午前0時ちょうど。」とアマギ。「何? あと7時間か。」とキリヤマ。突然、ブザーが鳴る。「こちら、ステーションV2。巨大なミサイルが宇宙より接近中!」 CM(?)
 ステーションV2に迫るミサイル。回転しながら攻撃するV2だが、ミサイルを破壊できない。追突され、爆発するV2。地球に向かうミサイル。{ 今回、異形の宇宙人も怪獣も出てこないが、何も言わないミサイルが不気味。 }
 「フルハシ、アマギ、ソガは、ホーク1号で。ダンは、オレとホーク2号だ。」とキリヤマ。渋い顔をするダン。出動。「ダン、頼むぞ。」と、キリヤマに肩を叩かれるが、無言で失踪するダン。ホーク1号、発進。「隊長機はどうしたんだ?」とソガ。「まだ発進してない。」とフルハシ。イラ立ち、時計を見る、ホーク2号操縦室のキリヤマ。「何をしてるんだ、あいつ。」とキリヤマ。作戦室のアンヌに通信するキリヤマ。「ダンはいないか?」 「えっ?」 「探すんだ、急いで。」 「は、はい。」
 ナレーション。「その頃、ダン隊員は、ウルトラ・アイを持っていると思われる不思議な少女を探すために、山を降りていった。」
 待ちきれないキリヤマ。「出撃する!」と言って、両手でサインを送る。ドアが開き、よろこぶキリヤマであったが、アンヌであった。「ダンは?」 「どこにも見当たりません。私が代わりに。」 「そうか。よし。」 キリヤマのサインで、発進するホーク2号。「ホーク1号、ホーク1号、こちらキリヤマだ。」 「はい、こちらホーク1号。」 ホッとするフルハシら。「敵は手強いぞ。慎重に行動しろ。」とキリヤマ。「了解!」とフルハシ。{ 操縦を担当することが多い怪力のフルハシ。後の『タイムボカン』への影響を見出すことも不可能ではない。 } 並んで飛行する二機。
 壁画のアップ。再び、スナックだ。踊っている若者たち。ダン登場。音楽が止み、ふり向いた若者たちは、みなウルトラ・アイを付けている。{ 輪ゴムで固定しているようだ。 } 驚き、本物を探すダン。が、若者に包囲され、エレキ・ギターがかき鳴らされると、たこ殴り(?)にあう。{ マゼラン星の少女は催眠術も使えるのかも知れないが、多量のウルトラ・アイを用意するなど、あり得ない演出が最高すぎる。 }
 迫ってくるミサイル。
 時計が11時を指している。時報が鳴り出す。店内に、ひとり倒れていたダンが起き上がる。「ダン。」 少女が現れる。向かい合う二人。ダンはウルトラガンを撃とうとするが、少女は大型の銃を発砲して、ウルトラガンをはじき飛ばす。見つめ合う二人。{ 実は、凄腕の工作員のようだ。しかし、少女が持つ大型の銃がシュール。ダンプを運転したり、大型の銃を軽々と扱って見せたり、案外、男っぽいマゼラン星の少女。ルックスも、まゆが太く、美男力士のような丸顔で、かなり中性的。色仕掛けで、ウルトラ・アイを奪わなかったのも、当然かも。個人的には、タイプだけど (///ω///)
 飛行するミサイル。攻撃するホーク1号&2号。まったく歯が立たず、そのまま飛び続けるミサイル。{ 地球的な危機なのに、援軍はナシか??? 間に合わなかったのか??? R1号はもうないのか??? }
 スナック。銃を構え、テレパシーで話す少女。「この星の命も午前0時で終わりです。」 「君も死ぬのか?」 「私は仲間が迎えに来てくれるわ。」 暗い顔で、コンピュータの紙テープを取り出すダン。「誰も来ない。君は、初めから見捨てられてたんだ。」 紙テープを読み、自らの運命を悟る少女。悲痛な音楽。二人の眼のアップ。「この星で生きよう。この星と一緒に。」 { 本作の頂点。だが、母星とは異なる環境に長居できないのは、後に、ダン自身が証明した。 } 無言で、髪に隠していたウルトラ・アイをさし出す少女。{ ダンのことを気に入ったのかも知れない。そうでなかったら、返す理由がない。母星への反逆とも違う気がするのだ。 } 変身音が鳴り響き、飛び立つセブン。ミサイルの内部に潜入し、操作方法を探るセブン。何か建物(?)に接近するミサイル。だが、セブンの操作で方向転換し、飛び去るミサイル。{ どこへ行くのかは不明。関係ない星を破壊しないだろうか??? あるいは、マゼラン星からの操作で、再び方向転換するかも。心配である。 }
 スナック。時計の秒針の音。マゼラン星の少女は、ゆっくりとジュークボックスに近づき、時計を見つめる。午前0時。秒針の音。ためらいながら、「J」、「7」と押すと、レコードに針が触れ、怪音とともに火を噴く。ジュークボックスの下から出る煙に包まれる少女。{ レコードを使って死ぬのが詩的だ。この火を噴くレコードが、初めて観た時から、頭を離れない。自殺する宇宙人と言うのは、他に例があるだろうか??? ここに本作の比類なさがある。 } 0時の時報が鳴る。ダン登場。ジュークボックスの前で、少女のブローチを拾うダン。 「何故、他の星ででも生きようとしなかったんだ。ぼくだって、同じ宇宙人じゃないか。」 { まさに、詩…。 }
 夜の街を歩く{ 孤独感の漂う }ダン。{ 群衆は、エキストラではないようだ。 } 悲しい音楽。ナレーション。「数年後には我々も月旅行が可能になるかも知れません。しかし、月にも土星にも、生物が全くいないという確証はないのです。我々が月に、その他の惑星に行けるとしたら、あるいは、不思議な少女と同じ運命が待ち受けているのかも知れません。」 { ややピンボケな内容。もっと違うことを言って欲しかった。 } 公園の噴水の傍に停めたポインターに乗り、走り去るダン。いつもの終わりの音楽。


ツッコミどころ

  • ダンのポインターを転落させた飛行物体は、ウルトラ・アイを奪った少女を収容する時間が無かったのだろうか???
  • セブンがミサイルに到達した時、ホーク1号&2号は何処へ??? R1号などの使用が決定し、退避してたのかも。
  • 通称、マゼラン星人マヤって、誰が付けたのかしら??? 韻を踏んでるのがステキだが。

わたにゃんが感情移入した人物

 マゼラン星の少女。根が暗く、影があるところが、わたにゃんに似ている。


ふと思ったこと (*´∀`)

 実は、マゼラン星の少女は犯罪者で、懲罰的に地球に送られたのかも。任務遂行すれば、減刑するとか言われて… ( ゚∀。)
 いろいろな想像が可能であるのは、本作が「詩」だからである。←ウソくさい理論
 熊井啓の『サンダカン八番娼館 望郷』(1974年)との本質的な類似が注目に値する。ダンは、どこかに少女の墓を作るかも知れない。多分、マゼラン星に背を向けるように… (つд⊂)


  Ver. 0.21 2011年06月28日22時20分頃、完了。


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