ウルトラマン
第23話
故郷は地球 (核心)


1966年12月18日放送 円谷プロダクション制作
監督:実相寺昭雄 脚本:佐々木守
出演:二瓶正也、小林昭二、桜井浩子、黒部進、石井伊吉、ピエール・ピロッツ、上田敏也、ほか

犠牲者はいつもこうだ! 文句だけは美しいけれど…。


イデ隊員の眼となり、言葉となれるだろうか???
(まじめにレヴュー:{}内は、わたにゃんの解釈)

 ファンファーレのような音楽。青空とたくさんの国旗を見上げるカメラ。「それは国際平和会議が東京で開かれる年であった。だが、その年…。」とナレーション(浦野光)。飛行するジェット旅客機。突然、爆裂。「空や海の事故が相次いだ。しかも、その原因は、杳(よう)として不明であった。」とナレーション。もう1機、爆裂。
 科特隊本部。地図を見る青いジャケットの隊員たちとスーツ姿の外人(ピエール・ピロッツ)。「コノズデ、ワカルトオリ、エ、コトシニハイッテ、オコッタ、ソラヤウミノジコハ、スベテ、コクサイヘイワカイギニ、シュッセキスル、カッコクノダイヒョウノノッタ、フネヤ、コウクウキナノデス。」と外人。「と言うことは、ムッシュ・アラン、今度、東京で開かれる国際平和会議を妨害しようとするヤツらが…。」とムラマツ(小林昭二)。「ウィー、パリノホンブデモ、エ、ジタイヲジュウヨウニカンガエ、ワタシヲ、ニッポンニ、ハケンシタノデ~ス。」とアラン(外人)。{ セリフと口が合ってナいが、上田敏也が吹き替えてるらしい。} 「うん。」と、うなずくムラマツ。うなずくハヤタ(黒部進)。イデ(二瓶正也)のアップ。サイレンが聞こえてくる。「ちきしょう、全世界の全ての国の代表が集まるってゅうのに、一体、どこの国だ? 隠れて、コソコソ妨害しようとしてる卑怯な国は。」とイデ。{ すでに主役として動き出してるイデ。} 晦渋な表情で聞いているフジ(桜井浩子)。カメラが動き、「マッテクダサ~イ、ソレハ、チキュウジョウノクニトハ、カギルィマセン。」とアラン。また、カメラが動き、「それでは、地球の平和を妨害しようとする、別の星の宇宙人。」とムラマツ。晦渋な表情で、{ っつうか、悪役風の顔で、}聞いてるハヤタ。アランの後方にアラシ(石井伊吉)もいるが、一瞬しか映らナい。
 夜の屋外。パトカーの赤いランプのアップ。サイレンの音響は、前のシーンからの続き。「その頃、国道1号線を狂ったように走る1台の車があった。」とナレーション。道路を走る車のライトと追うパトカー。「東京で、老人と子供をひき殺して、そのまま逃げた車である。」とナレーション。パトカーの運転席。「くそ、間道(=わき道)へ入って逃げる気だな。」と、ハンドルをさばく、白いヘルメットの警官(飯田和平)。デコボコ道を逃げる車。追うパトカー。パトカーの運転席に閃光と衝撃音。「あああっ、うわ。」と警官。ブレーキを踏む足。衝突音と燃え上がる焔。車の前下方から写すカメラ。焔と、それに覆い被さるような車体のアップ。車体の下の隙間から、パトカーが来るのが見える。パトカーの後下方から写すカメラ。降りる警官たち。車体の下の隙間から、前の車から降りてきた女と男(?)が取り押さえられるのが見える。{ この妙なアングルは、いかにも実相寺昭雄的だが、後年の作品、例えば、『恐怖の電話』(怪奇大作戦)などと比較すると、破壊力がイマイチだ。} 壊れた車と焔。燃える車、煙。不安な音楽。
 科特隊専用車に乗ってる、前のシーンの警官、ムラマツ、ハヤタ、アラン、運転するアラシ。{ アランも含め、オレンジの戦闘服。次のシーンをイデとフジだけにするためか(?)、隊員乗せすぎ ( ゚∀。) } 「見えない壁? そんなバカな。」とハヤタ。「いや、ホントなんです。確かに、見えない壁か何か…。」と、後部座席に向かって話す警官。「ムッシュ・ムラマツ、コレハ、レイノ、イマ、ゼンセカイデオキテイル、ジケント、カンケイアルカモシレマセンヨ。」とアラン。「と言うと?」とムラマツ。「イママデニ、パリノホンブヘキタ、シリョウニヨレバ、シズメラレタフネモ、ツイラクシタコウクウキモ、スベテナニカ、カベミタイナモノニショウトツシタト、カンガエルヨリホカナイノデス。」とアラン。考え込むハヤタの横顔。カメラが動いて、ムラマツのアップ。「ううん。見えない壁か。」とムラマツ。荒地を走る科特隊専用車。{ 左ハンドル。アラシが本当に運転しているようだ。} 「あ、あすこが昨夜の事故現場です。」と警官。「よし、徐行しよう。」とムラマツ。「ハイ!」とアラシ。程ナく、何かにぶつかって、弾き返される科特隊専用車。衝撃音。「あれ?」と誰か。「どうした、故障か?」と、アップになるムラマツ。「おかしいんです。エンジンには異常はないのに、進みません。」とアラシ。「何?」とムラマツ。「まるで、前に壁か何かあるみたいに…。」とアラシ。ルームミラーに逆に写ってるアラシ、アラン、ハヤタ、ムラマツ。何かが回転するような奇怪な音が聴こえてくる。「危ない! 外へ早く!(やや聞き取り困難)」とハヤタ。外に飛び出し、逃げる隊員たち。{ 警官はいるが、オレンジの戦闘服は3人。1人足りナい。反対方向に逃げた??? } 上方からの焔に包まれ、吹っ飛ばされる科特隊専用車。「ロケットだ!」と、アップになるアラシ。「見えないロケットだ。」とハヤタ。「ムラマツから本部、ムラマツから本部。見えないロケットに注意せよ。東京上空を警戒せよ。」と、指令を出すムラマツ。
 飛行するビートル。操縦席のイデとフジ。「あわてて出て来たけどよぉ。見えねぇロケットなんて、探せっこねぇじゃねぇか。」とイデ。「うるさいな。ちょっとだまっててよ。」と、後ろで何かを操作しているフジ。「あなた、科学特捜隊の隊員でしょ。電波探知機のことぐらい覚えておきなさいよ。」とフジ。罵倒され、つまらなそうに外を見てるイデ。「しめた! 北北東を13キロ。」とフジ。「よし!」と、気合いの入るイデ。「あ、あれ?」とイデ。青空に、飛行機雲が伸びて行く。「見えないロケットだ。」とイデ。「え?」と、外を見るフジ。飛行機雲を追うビートル。マルス133を発射するが、手応えがナい。反撃の光線をかわすビートル。操縦室の上から写すカメラ。年季が入ってるフジのヘルメット。「南へ2キロ、東南へ1.5キロ。あ、西へ5キロ。」とフジ。「ダメじゃない、そんなに外れちゃ。北西へ1キロ。イデくん、しっかりしてよ!」とフジ。{ 年長者へのタメ口や暴言が横行してたり、今回はいナいが、子供が隊員になったり、科特隊には、かなりおおらかな雰囲気がある。T○Cとは違うのだよ、T○Cとは。 「てやんでぇ~、ちきしょう! 見えねぇってのはシャクだな~。」と、必死で操縦するイデ。マルス133を発射するが、手応えがナい。飛行機雲が消える。「逃げたわ。」とフジ。「ちっきしょ~、あと少しだったのに。」と、操縦席のイデ。「見えないロケット。いったい、どこの星から。」と、手前に座るフジのアップ。{ 見事に緊張感を出している。この台詞、次のシーンで、ムラマツが繰り返す。}
 壁(?)に埋め込まれた電球の点滅。電子音。科特隊本部。オレンジの戦闘服の隊員たち。自転車。「よく見ろ。自転車の車輪には、何本と言う金属の矢が付いている。しかし、こうして、速く回せば回すほど、見えなくなる。ものすごいスピードで動くものは我々人間の眼には捕えにくくなる。」と、自転車の車輪を回してみせるムラマツ。のぞき込んでるイデとハヤタ。後ろに、アラシ、フジ。「そうか! あのロケットは、ものすごい力で、振動してるってゆう訳か。」と、のり出すイデ。「うん。それともう1つ。」とムラマツ。「この円盤には、見る通り、こんなにたくさんの色がついてる。」と、小学校の理科の実験みたいな装置を見せるムラマツ。後ろにアラシ。「しかし、こうして速く回せば回すほど…。ほら、全ての色が消えて、灰色1色のように見えるだろ。」とムラマツ。うなずく隊員たち。{ 2つ目の実験は、何を言いたかったのか??? } 「そうか。すると見えないロケットを見破るには…。う、ん…。」と、頭を抱えて考え込むイデ。「くそ~。」と、立ち去るイデ。{ 後半の打ちひしがれたイデとの対比が見事。} 「しかし、問題は、あのロケットがどこの星から来たかだ。」と、上を見るように話すムラマツ。{ 前のシーンのフジの台詞の繰り返し。後半で、「実は…。」と言う流れなのだ。}
 青のジャケットに着替え、何かを設計しているイデ。しっとりとした音楽。「イデさん。コーヒー。」と、気を利かせるフジ。「ありがとう。」とイデ。「ここに置いとくわね。」と、やさしげなフジ。微笑み会う2人。イデは照れている。{ さらに、後半のイデとの対比が見事。音楽の使い方など、実相寺昭雄が愛や優しさを語る場面の手法だ。後半、イデにもっとも同情していたのは、フジではナかっただろうか。}
 繰り返し構造の未来的な天井を見上げるカメラ。電気ノコギリのような金属音。画面下方から現れるムラマツ。{ 少し、実相寺昭雄らしくなって来た。} 「では、出発する。1号機には、スペクトルα線とスペクトルβ線、2号機には、スペクトルγ線がそれぞれ積み込まれている。……。イデ!」とムラマツ。アランを含む5人の隊員たち。立ったまま居眠りをしてるイデ。「おい、イデ!」とムラマツ。「イデさん!」と、イデをはたき起こすフジ。「は、はい、何ですか?」と、目覚めるイデ。前の方を指さすアラシ。状況に気づくイデ。「何ですか、じゃない!」と怒る、画面左下のムラマツ。「これから出発だと言う時に、何を寝ぼけとるんだ。」と、肉迫するムラマツ。下から見上げてるカメラ。{ はり倒すんじゃナいかと思う迫力がある。小林昭二の怒鳴り声には迫力があり、『かまいたち』(怪奇大作戦)でも、まさに問答無用であった。} 「すいません。夕べ徹夜したもんで、つい…。」と、泣きそうなイデ。「のんきなヤツだ。」とムラマツ。{ はり倒さナいのが良いのだ。} 「お前から、一応、3つの新兵器について、説明してくれ。」とムラマツ。「ハイ。では、説明します。スペクトルα線は、光の屈折を自由に変えることの出来るものです。スペクトルβ線は、光の色彩吸収力を破壊するもの。そして、スペクトルγ線は、光の反射角度にある制限を加えるものです。」とイデ。うなずく隊員たち。{ 完全に主役のイデ。ハヤタの影の薄さは、ねらってるのか。}
 飛行するビートルと小型ビートル。出撃の音楽。ビートルの操縦席のイデ。すぐ後ろにフジ。警報器が鳴っている。「よし、スペクトルα線、発射!」と、スイッチを操作するイデ。光線が森の方に伸びる。手前にムラマツ。「スペクトルβ線、発射!」とイデ。操作するムラマツ。2本の光線が先端で交わる。「スペクトルγ線、発射」と、マイクを取るイデ。小型ビートルから光線が伸びる。3本の光線が交わる。「見えないロケットが見えた!」とイデ。地表に上部が回転している円盤が現れる。「攻撃開始。」と、冷静に指示を出すムラマツ。ビームを発射するビートル。「ヤツは逃げるぞ!」と、小型ビートルのアラシ。隣りにハヤタ。光線をかわし、飛行して行く円盤。「撃て! 撃て!」と、熱くなってるムラマツ。その後ろに、アラン。「逃すな! 撃て!」と、マイクを取るムラマツ。「了解!」と、マイクで応える{ 地球の裏側にいるかのように、妙に反応が遅い }ハヤタ。ビームを発射する2機。怪光線で反撃する円盤。ビームが命中し、煙を出しながら落下する円盤。地表に激突し、爆発。焔があがる。
 森の中。少しモヤがかかっている。不気味な動物(?)の声。武器などを持って、捜索する科特隊。{ ムラマツが持ってるアンテナみたいなのが気になる。} 怪しいうめき声。「おっ! あれは!」とムラマツ。木々の向こうに怪獣が。「オオ、ヤッパリ、ジャミラ。」とアラン。「何だって?」とムラマツ。「ジャミラ、オマエハ…。」とアラン。{ 面影があるのだろうか??? 謎である。} 武器を手に前進するアラシ&イデ。{ イデは、ここではバズーカ砲みたいなのを持ってる。マルス133の方が似合うのだが…。} 怪獣の顔のアップ。森の中を走る隊員たち。{ 顔がブレてて、誰が誰なのか分からない。} 逃げる怪獣。「撃て!」とムラマツ。発砲する隊員(アラシ?)。フジの横顔のアップ。怪獣のうめき声。心配そうな表情で歩くフジ。「ムッシュ・アラン、どうしたの?」とフジ。後ろ姿のフジを追う{ フェティッシュな }カメラ。泣いてるようなアラン。{ 後半、冷徹さを見せるのだが、本当は彼もツラかったのかも。もしかすると、親友同士だったのかも。} 走ってくるイデを見上げるカメラ。「ざまぁみろ、やれやれ!」と、得意になり、自らも射撃するイデ。{ 卑劣な宇宙怪獣だと確信してるのだろうか。} 走って逃げる怪獣の横顔。陽が傾いてきた森の眺め。動物(?)の声。ふり返り、焔を吐く怪獣。「ひるむな! 撃て、撃て!」とムラマツ。山の陰に逃げ込む怪獣。「ちきしょ~、隠れやがった。」とアラシ。動物(?)の声。暗転。
 淋しげな音楽。サーチライトがいくつも点灯する。どこかで水の音。「夜に入ってからも、科学特捜隊の探索は続けられた。」とナレーション。サーチライトのそばにしゃがんでいる隊員たち。「この美しい星空だって言うのに、いったいどの星から来たのかしら。どうして、国際平和会議を妨害しようとするのかしら。」とフジ。{ ちょっと、「どの星から」の繰り返しが多いな。} タバコを吸っているムラマツ。後方にライトがあり、逆光。少し霧がかかっている。「ムッシュ・アラン、さっき、あなたは確か、あの怪獣を見た時、ジャミラと言いましたね。ジャミラとはいったい何なんです?」とムラマツ。「エ、ア、ムッシュ・ムラマツ、パリノホンブデ、ヨソクシテタ、サイアクノジタイニナリマシタ。」とアラン。「と言うと?」とムラマツ。立ち上がるハヤタ。「ムッシュ・アラン、もうここまで来たんです。あいつの正体を教えてください。」とハヤタ。{ ハヤタの唯一の見せ場。} 逆光のアランのアップ。「ショクン、アレハ、カイジュウデハアリマセン。」とアラン。ハッとするイデのアップ。「アレハ、イヤ、カレハ、ワレワレトオナジ、ニンゲンナノデス。」とアラン。{ だいたい、口と台詞が合っている。} 「そ、それは…。」とムラマツ。「それは、」とナレーション。サーチライトのアップ。「アメリカ、ソ連を中心に世界各国で宇宙競争が行われている頃であった。」とナレーション。宇宙船のモノクロ写真によるスライドショー。{ 過去のことのように語っているが、本作は、まさに「宇宙開発競争」のまっただ中で制作されている。} 「ある国で打ち上げられた人間衛星が、ついに帰って来ないと言う事件が起きた。その宇宙飛行士の名前が、ジャミラだったのである。しかし、科学のため、人間を犠牲にしたことが分かると大変だ。その国は、ジャミラの乗った人間衛星の失敗を全世界にひた隠しに隠して来たのである。」とナレーション。{ さすがに、アランに語らせると、聞いてて疲れるので、ナレーションにしたらしい。でも、浦野光の語りは、あまりに健康的すぎる。岸田森とか、清水紘治のような影のある役者はいナかったのか? } 川面に光が揺れている。「そうか。そして、そのジャミラの乗ったロケットは、宇宙を漂流しているうちに、どっかの星に流れ着いた。しかし、その星には、地球のような水も空気もない。だが、ジャミラはどうにかして生き延びた。しかし、その星の異常な気候風土の中で生きているうちに、あんな姿に変わってしまったと言う訳か…。」とムラマツ。「ソウデス。オソラク、カレハ、ナンジュウネンカカッテ、ジブンノノッテキタ、ロケットヲ、ツクリカエタノデショウ。ソシテ、チキュウヘカエッテキタノデス。チキュウノ、ゼンジンルイニタイスル、ウラミト、ノロイノココロダケヲモッテ。」とアラン。{ ジャミラは、現在、33歳のようだから、「何十年かかって」と言うのはおかしい気がする。} 聞いている、アラシとイデ。「おれ、やめた!」とイデ。同時に、音楽が止む。「どうしたんだ、イデ。」とアラシ。「おれ、やめた! ジャミラと闘うのはやめた。」と、立ち上がるイデ。「何を言ってるんだ!」と、怒鳴るアラシ。「離せよ、離せよ。よく考えてみりゃ、ジャミラはおれたちの先輩じゃないか。その人と闘えるか!」とイデ。「しかしな。」とアラシ。2人の後ろのサーチライトがまぶしい。「おい、アラシ、おれたちだってな、おれたちだってな、何時、ジャミラと同じ運命になるか、知れないんだぞ。」と、マルス133(?)を地面に叩きつけるイデ。{ この台詞は、重要である。「自分たちもいつ怪物になるか分からナい」と言う視点を持つことのできるイデ。実は、本作の核心とも言える部分である。だが、残忍な事件を報道される現代の多くの人々は、このことを忘れていナいだろうか??? その方が、楽だから…。40年以上前の作品には、このような視点を提案する制作者がいたのである。だが、むしろ、ずっと古い、普遍的な視点だと考えるべきだろう。それが、今、忘れられてるのだ。なお、マルス133はイデの発明した武器である。自らの存在をも否定するかのようなイデ。本当に誠実な人間は、今、いる場所に安住しナいのではナいか??? このイデのように。} 「何をするんだ!」と、怒鳴るアラシ。{ 自らの健全さを疑わず、任務に忠実な人間を体現しているアラシ。} 「くそ~、おれがこんなものを考え出さなきゃ良かったんだ。そうすりゃ、ジャミラは…。ジャミラは…。」と、光の中を歩き始めるイデ。{ ジャミラの凶行やその犠牲者のことを考え、言葉を続けられナいイデ。「おれがこんなものを考え出さなきゃ」と言ってるのは、スペクトルα・β・γ線のことだろう。} 淋しげな音楽が再び流れ始める。フジのアップ。何も言わず、下を向く。ムラマツのアップ。無言。「ショクン!」とアランの声。アランの方を見るハヤタ。「アラタメテ、カガクトクソウタイパリホンブカラノ、メイレイヲツタエル。」とアラン。立ち上がるハヤタ。{ ウルトラマンとして、指令を受けると言う感じだ。} 「ジャミラノショウタイヲ、アカスコトナク、ヒミツリニ、ホウムリサレ。ウチュウカラキタ、イッピキノカイジュウトシテ、ホウムリサレ。ソレガ、コクサイヘイワカイギヲ、セイコウサセル、タダヒトツノミチダ。」と、ライトを背に立つアラン。{ アランの表情を逆光で塗りつぶし、見えナい人物(上層部の人間)からの言葉であることを暗示してる。} 茫然としゃがんでるイデ。「イデさん…。」と、歩みよって、しゃがむフジ。無言のイデ。「イデ、お前の気持ちは分かる。だが、ジャミラは、今や人類の敵になってしまってるんだ。なっ。」と、歩みより、イデの肩に手を置くムラマツ。立ち上がり、「ばっかやろ~!」と叫ぶ、イデのアップ。{ 神に毒づいたのだろうか??? 何とも言えナい味がある。味も重要なのだ。本作は、論文ではナい。} ライトが写され、それが消えて、暗転。{ ライトの光や水の音など、実相寺昭雄の演出が光る名場面であった。このシーンを持って、ポジがネガに変わるように、すべてがさかしまになるのだ。}
 昼。{ 科特隊にとって、もう、昨日とは異なる昼である。} 森の向こうに立つジャミラ。火炎で攻撃する、赤い戦闘車両群。「あいつは、火には何とも感じないのか!」とムラマツ。避難する住民と、誘導する兵士たち。ジャミラの吠える声。ニワトリや風呂敷包みや柱時計などを持った、妙に時代がかった避難民。カヤブキの家が並ぶ村を襲うジャミラ。{ 未来の話のハズなのに、このような村を出した理由は??? まるで、『狙われた街』(ウルトラセブン)ちゃぶ台のようだ。} いナくなった子供を追って、村に戻ろうとする若い母親。止める男たち。走る少年(吉野謙二郎)。火を吐いて家を燃やし、家を蹴散らして歩くジャミラ。「アキラ、どこ?」と、母親。煙を吸い込んで、倒れこむ母親。{ 迫真の演技。クレジットにある、中村富士子と言う女優か??? } 走る少年。「キャップ、おれはあの子を!」と、立ち上がるハヤタ。「おい、ハヤタ、待て!」とムラマツ。{ 命令違反も横行する科特隊。でも、何故、止める??? } 火を吐くジャミラ。燃えるカヤブキ。走るハヤタ。家に戻った少年が、飼ってる鳩を逃す。「かわいい。」と、鳩をつかむ少年。{ あまり、お利口そうではナいな。} 駆けつけるハヤタ。「さあ。」と、少年を抱えて逃げるハヤタ。「ハヤタ~!」と煙の中を走ってくるイデ。マルス133を持っている。ジャミラを見上げるイデのどアップ。「くそ~。ジャミラ、てめぇ、人間らしい心は、もう無くなっちまったのかよ~!」と、叫ぶイデ。ジャミラの動きが止まり、淋しい音楽。ジャミラのアップ。燃える村。焔を見つめるジャミラ。{ 少し人間らしい心が残っているのかも知れナい。そのことは、とても重要ではナいか。}
 青空に翻る各国の旗。「水の無い星に育ったジャミラは火には強かった。科学特捜隊によって、高射砲が据え付けられ、人工降雨弾が装填された。」とナレーション。迫るジャミラを{ 何故か }直接砲撃する高射砲。雨が降り、苦しみ、うめくジャミラ。倒れるジャミラ。各国の旗を見るジャミラ。再び、立ち上がるジャミラ。雨は止んでいる。{ 弾切れか??? 科特隊の作戦は、たいてい単発で終わる。} 少年を逃がし、変身するハヤタ。また、鳩と遊んでる少年だが、ウルトラマンを見て驚く。{ この少年、ホントに大丈夫か??? } 飛行するウルトラマン。会議場を襲い、国旗を倒すジャミラ。ジャミラを突き飛ばすウルトラマン。ウルトラマンとジャミラの格闘。手をわき腹で組み合わせ、水を放出するウルトラマン。水を浴び、苦しむジャミラ。倒れて、泥にまみれ、あえぐジャミラ。{ 途中から、人間が泣くような声に変わる。} 倒れた国旗に泥が跳ねる。{ 日本、アメリカ、イタリアなど。} 悲しい音楽。苦しみの末、絶命するジャミラ。{ 怪獣が苦しみながら死ぬ場面としては、かなり長い。} 引いて行くカメラ。
 画面の左側にムラマツのアップ。背景はボケている。前のシーンの音楽が続いている。「ジャミラ、許してくれ。だけどいいだろ、」とムラマツ。草が茂る崖の上に夕陽に照らされた十字架と隊員たちの影。「こうして、地球の土になれるんだから。お前の故郷、地球の土だよ。」とムラマツの声。{ 偽善とも取れるが、やさしさの満ちあふれた小林昭二の声で言われると、グッとくる (〃∇〃) } 画面の右側にイデのアップ。背景はボケている。悲痛な表情で、無言のイデ。二瓶正也の演技も完璧である (〃ノ∇ノ) }
 青空に翻る旗を真下から写すカメラ。{ アメリカ、日本、フランスなど。 } 「その日、国際平和会議は、盛大に幕を開いた。そして、科学特捜隊の手によって建てられた墓碑銘は、こう読めた。人類の夢と科学の発展のために死んだ戦士の魂、ここに眠る。」 { フランス語??? ちなみに、実相寺昭雄は、早大の仏文科を出ている。 } 鏡のように磨かれたジャミラの墓に映る、日本の国旗、青いジャケットのイデ、ムラマツ、ハヤタ、フジ。{ はじめに「A JAMILA (1960-1993)」と彫られてるから、ムラマツより若いらしい。必ず、日本の国旗が映るのが、意味ありげ。実相寺昭雄の長編映画『曼陀羅』を連想する。} 隊員たちは去るが、イデだけが残される。会議場に向かう、正装した人々が通過する。{ が、黒い服で、葬儀に向かうようにも見えナいか??? } 逆光で、画面の右半分にイデのアップ。表情は分からナい。「犠牲者はいつもこうだ! 文句だけは美しいけれど…。」とイデ。{ 実に重く、普遍的な視点である。例えば、動物実験やゲームで殺される動物にもあてはまるのは言うまでもナい。} 「イデ!」と、ハヤタ、ムラマツ、アラシが呼ぶ。応えナいイデ。怪獣ジャミラの泣き声が聴こえて来て、{ 凄絶に }暗転。


ツッコミどころ

  • 国際平和会議に参加する各国の代表の動向を、ジャミラはどのようにキャッチするのだろう???
  • ジャミラは、円盤に乗る時には、等身大になることがデキるのだろうか???
  • 下手すると、「欠番」になりかねナい、なかなか危ない作品だ。

わたにゃんが感情移入した人物

 職務に私情をはさみまくるイデ。わたにゃんに似てる。


ふと思ったこと (*´∀`)

 ふと、ジャミラの復讐をお膳立てした、悪質な宇宙人や組織が黒幕にいるんじゃナいかと思った。そしたら、ますます、かわいそうなジャミラ。あり得る話である。
 ジャミラを大量殺戮をする、理解不能な精神異常者と読み、本作の評価に疑問を投げかけるサイトを見つけた ( ̄□ ̄;) 確かに、ジャミラは怪物と化している (ノд`) だが、イデのように、「自分たちだって、いつ怪物になるか分からナい。」と言う視点を持っていれば、罪を犯した人間に、彼がどんなに理解を超えていても、「死ね!」とは言えナいのである (ノд`) そのことをイデの葛藤を通じて描ききっているのだから、やっぱし傑作だ d(⌒o⌒)b
 本作を観て、ますます、二瓶正也が好きになった。思えば、『ノンマルトの使者』(ウルトラセブン)でも、端役ながら、実に生き生きと演じていた。本当に、すばらしい。


  Ver. 0.10 2011年09月26日30時32分頃、完了。


 ご意見、ご感想は watahme@momonahn.egoism.jp まで(メールアドレスは半角で)。