怪奇大作戦
第16話
かまいたち (核心)


1968年12月29日放送 円谷プロダクション制作
監督:長野卓 脚本:上原正三
出演:岸田森、松山省二、加藤修、原保美、小林昭二、勝呂誉、小橋玲子、池田駿介、ほか

ぼくだって、確信があるわけじゃないさ。 
 ただ、彼を見てると、何となくそうじゃないかと思えてくるんだ。


水槽の中の怪魚
(まじめにレヴュー:{}内は、わたにゃんの解釈)

 踏切の赤いランプが点滅し、電車が通過。赤いランプのアップの背後に焦点の合ってない白いコートの女の姿。夜道を歩く女。ふと、誰かに追われてるのを感じ、急ぐ女。壁に、走る人物の怪しい影が…。恐怖に駆られ、全力で走りだすが、転倒し、バッグから化粧品などが飛び出す。それらを拾って、立ち上がると、突風で髪が逆立ち、街灯の電球が割れる。次の瞬間、バラバラになって四散する女。川に落ちるパンプス。『かまいたち』のタイトル。音楽とクレジット。川の中に、切断された頭部や腕が散らばっている。{ 血が流れるような描写はなく、何か冷たい感じがする。}
 暗い通路のようなところで、運ばれて来た女の遺体を見る町田警部(小林昭二)、的矢所長(原保美)、牧(岸田森)。「こりゃあ、むごい。」と牧。「信じがたいような手口だなぁ。」と所長。「どう思う?」と警部。「鋭い刃物のようなもので切ったとは思うがね。」と所長。「ううん。我々は日本刀と見てるんだ。しかも、正宗のような切れ味のいいヤツ。」と警部。「いや、それはおかしい。どんな剣の達人でも、こうまではできませんよ。」と牧。「よそでバラバラにしてから運んだとしたら、どうする?」と警部。「よそで。」と牧。
 昼間。犯行現場。割れた電球の下で話し合う、警部、所長、牧、野村(松山省二)。「こんなとこで人間をぶった切るバカがいると思うかね。見ろ、近くには民家もあるし、工場だってある。」と警部。こぼれた化粧品を見つける牧。「おい、ノム!」と牧。「はい。」と野村。「これを採取しとけ。」 「はい。」 化粧品の粉をハケで集め、ビンに入れる野村。「こっち側は、電球の破片があったりしてるんだが、向こう側はバカにキレイな感じだね。」と所長。「ええ。」と、渋い表情の牧。「そこら中、聞いてみたんですがね。」と、走ってくる三沢(勝呂誉)。「悲鳴一つ、聞いていないだろ。」と警部。「そうなんですよ。」と三沢。「うん。やっぱり、犯行現場はよそだ。」と警部。「じゃあ、警部はこの事件を…。」と牧。「むろん、痴情、怨恨…。」と警部。「いやあ、違うな。」と牧。「それじゃ、流しの犯行(被害者と無縁の人物による犯行)と見るのか?」と警部。「そうです。それも極めて突発的な。」と牧。{ 通り魔と言うことか??? 牧が、この時点で、そう確信する理由は不明。} 「甘い。これは君、流しに見せかけてはいるがね。どっこい、オレの目はごまかせん!」と警部。パトカーに向かう警部。警部を追う牧。「これがもし流しだとすれば、第二、第三の事件も起こらないとは限らない。厳重な警戒が必要ですよ。」と牧。「参考意見として聞いておく。」と警部。若手の谷刑事(池田駿介)と打ち合わせする警部。川の中を捜索中の二人の警官に、「おい、何か見つかったか?」と警部。「何もありません。」と警官。「あがれ!」と警部。イラ立ち、顔をしかめる牧。空や周囲を見渡す牧。不思議な音楽。捜査を見ているトラックの運転手の青年(加藤修)に気づく。気になる牧。「牧くん。」と所長が呼ぶ。「これは難しい事件になりそうだな。」と所長。「ええ。」と牧。
 SRIの実験室。フラスコの中の液体が沸騰している。分析中の三沢。「このチリは、現場(げんじょう)のものじゃありませんね。」と三沢。「やっぱり、よそから運ばれたのかね?」と所長。顕微鏡をのぞきながら、気にする牧。{ 牧は、流しの犯行だと証明したいのだ。} 「町田さんです。」と、さおり(小橋玲子)が入ってきた。「よ、どうだい。現場説の裏付け、取れたかい?」と、挑発する警部。「それが…。」と所長。「そうだろ。オレの目に狂いはないのさ。いやあ、被害者の林恵子と言う娘がこらまた大変なアバズレでね。あきれるじゃないか、ボーイフレンドだけで、なんと15人。これじゃ、バラバラにもされようってもんだ。」と警部。黙々と顕微鏡をのぞく牧。「所長。」と牧。「現場から採取した粉白粉(こなおしろい)です。これと同一のもんですね。」と牧。「とすると、現場で一度、中身をこぼした。」と所長。「そして、拾い入れたんですよ。」と牧。「やっぱり、被害者は現場にいたと考えていいんじゃないでしょうか。」と牧のアップ。「犯人が拾い入れたと考えてもいいだろ。」と警部。「うん…。」と、渋い顔の牧。「ま、今回は、SRIの手をお手をわずらわせなくてもすみそうだ。じゃ、失敬!」と、{ 得意になって }去る警部。苦笑いする所長。不機嫌な牧。怪しげな音楽が始まる。そのまま場面が変わる。
 「助けて~。」と、夜道を走る若い女。二人の警官が駆けつける。「どうしました?」とメガネの警官。「誰かが…。」と、遠くを指さす女。「行ってみよう!」と走り出す警官たち。突風で髪が逆立つ女。また、電球が割れる。振り返って、驚く警官たち。
 朝? サイレンを鳴らし、遺体の収容に走る車の中から現場付近を写すカメラ。{ ただならぬ感じがする。クッションのような車内の赤っぽい台も異様。} 毛布をかけた遺体を乗せ、その黒い車は走り去る。「どうして、被害者だけ残したんですか?」と牧。「誰かに追われてるって言うもんですからね。すぐそこへ走った訳です。すると…。」とメガネの警官。「非常警戒網を張っとけば、犯人を逮捕できたかも知れない。いや、第二の事件だって、防げたかも知れない。」と牧。「そんなこと言ったって、警察には警察の方針と言うものがあるんだ。」と谷刑事。「犯人を逃す方針ですか?」と牧。「君、何もそう興奮することはないじゃないか。」と谷刑事。川を見ていた警部がふり返る。{ 牧の推理どおり、流しの犯行だったのである。分が悪い警部。} 「この辺りの不良グループや変質者は全員チェックしてある。犯人割り出しまで、そう時間もかかるまい。」と警部。「ま、SRIさんも、たまにはお休みになってください。ご心配でしょうがね。」と言って、去る谷刑事。牧の肩を叩いて、去る警部。{ 牧の推理が当ったのに、何故、協同で捜査しないのか??? まだ、日本刀による犯行とみてるのか、警察は。} 「何だ、あの野郎!」と三沢。「まあまあまあ。休めって言われても、SRIの調査が終わった訳じゃないからな。」と所長。「もちろんですよ!」と、不機嫌な三沢。「先輩。」と、牧に話しかける三沢。「この辺り一帯の住民名簿が欲しいな。」と牧。「何とか、手に入れます。」と三沢。「頼むよ。」と牧。「ノム、聞き込みに回ってくれ。」と、野村にも指示を出す牧。かなり目立つ赤い服で、望遠レンズを手に写真を撮っているさおり。「さおりちゃん。すまんが、今日は一日中ねばって、ここへ来る人を片っぱしから撮ってくれ。」と牧。「まかしといて。」と、{ 楽しそうな }さおり。{ 被害者の遺体を見たりはしなかったのだろうか。異様な空気の中で、唯一の明るさである。} 「問題は凶器ですね。」と、所長に話しかけ、タバコに火をつける牧。電球の破片をいじっている所長。「さっきから考えてるんだがね。どうも刃物じゃないんじゃないかな。警官が聞いたと言う「ゴォ」と言う風の音。電球がまた割れてる点。死体を切った切り口の鋭さから言って、「かまいたち」のような現象じゃないかと思うんだがね。」と所長。タバコを吸いながら、「かまいたち…。」と牧。
 SRI本部。「かまいたち。つむじ風が起きた時、空気中に真空の部分ができ、人体がこれに接触すると、鎌ででも切ったように鋭く皮膚が裂ける現象を言う。信越地方に多く、昔はイタチの仕業とした。」と、百科事典を読む三沢。「ありゃあ小学校の頃だったな。友だちが、そのかまいたちにやられてね。ほっぺたがぱっくり割れて、大騒ぎをしたことがあるんだ。遊んでいていきなりだから、ビックリしたよ。」と所長。「眼にも見えないんだから、防ぎようもありませんね。」と、コーヒーを手渡すさおり。{ なかなか鋭い視点。} 「ううん。もっともその頃は、いたちの仕業だとかたく信じてたがね。」と所長。笑う牧と三沢。「しかし、かまいたちったってね、人間をバラバラにするほど、すごいもんじゃないからね。」と所長。「誰か、かまいたちを応用した凶器を考えついたヤツがいるんだ。」と牧。「そうだ。空気を一瞬真空状態にする。その中に人間が入る。バラバラにされる。」と三沢。{ 人間がいるところを真空にするんじゃないかしら??? 間違ってる三沢。} ドアが開き、写真の束を持って、野村登場。「はい。さおりちゃんの傑作。ざっと300枚はありますね。」と野村。「ごくろうさん。」と牧。
 写真を床に並べ、見ている牧、三沢、野村。{ さっきの警察がやりそうな、泥くさいと言うか、力づくな捜査。} いつしか、牧だけになる。徹夜で見ていたらしく、ソファーで寝ている三沢と野村。{ 何故か、牧の執念は、他の二人よりも強力なのだ。写真判定を企画したのは牧なのだろうか。} タバコを吸いながら、歩き回っている牧。ふと、一枚の写真を見て、ハッとする牧。{ 終始、牧のカンで、捜査が進む (*´∀`) 非科学的捜査を極めた、ある意味、反則な作品。} 野村を起こそうとするが、起きない。暗室で、一人の男の写真を引き伸ばす牧。「第一の事件の時にもいた。」と、トラックの運転手の青年を思い出す牧。「この眼は、たんなる野次馬の眼ではない。笑っている眼だ。」と、推理する牧。{ 少しも科学的でないのが凄い。}
 写真を持って、聞き込みをする牧。「ほう、これ松夫ですね。うちの運転手をしています。あ、あそこにいますよ。座ってる男です。」と工場長。ボールで遊んでる同僚から離れて、ひとり座っている青年。「呼びましょうか?」と工場長。「いえ、内密の調査ですので、本人には…。」と牧。「そうですか。あの、松夫が何かしたんでしょうか?」 「いや、別に。松夫くんと言うのは、どんな青年ですか?」 「そうですね。大人しくて、無口ですがね、仕事は真面目ですし、あ、通信教育も受けているようですよ。まあ、いい若者ですね。」 「身元を教えて欲しいのですが。」 「いいですよ。」 { 事務の女の子は、山崎ハコに似た美少女。} 松夫の履歴書を見せてもらう牧。「小野松夫。昭和19年10月2日生まれ。」と牧。{ 何かに怯えるような眼の }松夫のアップ。サイレンが鳴る。
 仕事が終わり、帰宅する社員たち。ポケットに手を入れ、背中を丸め、帰宅するべく歩いている松夫。夕陽に照らされた、SRI車の中の牧と野村。「牧さん、あの青年、どうですかね?」と野村。「と言うと?」と、タバコを吸っている牧。「普通の青年じゃないですか。たまたま現場を通りかかったのかも知れませんよ。」 「うん。ぼくにも確信はない。だから調べたいんだ。ついて来い。」と、車を降りる牧。野村が車を走らせると、夕陽があらわれる。『怪奇大作戦』の文字が出て、CM。
 夜。アパートに灯がつく。張り込んでいる牧。遠くに電車の汽笛が聞こえる。{ 作品中に何回も出てくる踏切が近所にあるのかも。都会の夜の雰囲気が出てる。} 室内。白黒テレビをつける松夫。「お前、全学連だな。」 「ただの学生ですよ。」 「そのプラカードは何だ?」と言うコントをやっている。テレビの英語講座(?)のテキストを見る松夫。が、集中できないようである。テレビの音を消して、タバコに火をつける。{ 松夫が犯人なのかは、まだ分からない。特に怪しい雰囲気はないのだ。} 松夫の顔、さらに右眼のアップ。{ 遠くをみているようでもあり、眼のアップは異様な感じがする。}
 部屋を出る松夫。車内で張り込んでいる牧と野村。「出てきましたよ。」と野村。松夫が車の横を通りすぎる。身体を低くして、隠れる牧と野村。「つけてみろ。」と牧。二人は車を降りる。牧はアパートの方へ行く。暗い道を歩く松夫。尾行する野村。食堂に入る松夫。中を伺う野村。{ 少し寒そうだ。放映は、12月29日だが、秋の終わり頃と言う雰囲気だ。}
 松夫の部屋を調べる牧。{ 鍵を開けて入ったのだろうか??? 大家に手を回して、合鍵を入手していたのかも。} 日記を見つけ、読む牧。{ 日記を読む牧を見上げるカメラ。} 「事件当日が空白だ。」と牧。{ 気づくときの牧の表情が、いかにも岸田森っぽい。不鮮明だが、空白のページの日付けは11月26日(火)のようである。} 電車の汽笛で、次の場面に。
 昼間。電車が入ってきた駅のホーム。駅前で待ってた松夫と合流する同級生(?)たち。男二人、女二人。{ 二組のカップル??? まっちゃんと呼ばれ、意外に人気のある松夫。} 赤いランプが点滅し、電車が通過する踏切。そこに姿をあらわす牧。{ ずっと、見ていたらしい。ほとんど、刑事。}
 水槽の中の大きな魚(=アロワナ)のアップ。パイプオルガンのおどろおどろしい音楽。喫茶店の中である。同級生たちは盛り上がっているが、ただ笑うだけの松夫。その様子を見ている牧。「お客さまにお知らせします。ただ今より、アロワナにエサを与えます。ごらんくださいませ。」と女性の声で、店内放送が流れる。{ 良い趣味の見せ物ではない。どこの店だ??? } 小さいヒブナを次々と呑み込むアロワナ。注視する松夫。ネガポジ反転した松夫の眼のアップ。激しくなる音楽。{ もちろん、店内の音楽ではないだろう。} 興奮して立ち上がる松夫。{ 松夫は、自身をヒブナと見たのか、怪魚と見たのか??? 前者であれば、社会と言う怪物に呑み込まれる自分の無力さに、後者であれば、水槽という社会の中で、無抵抗な女を呑み込む自分の怪物の本性に、戦慄したのだ。どっちだろう??? 奇妙な事に、作品中に答えはないのである。わたにゃんは、後者だと思っている。} 「どうしたんだ、まっちゃん!」と同級生。去る松夫。それを見て、立ち上がる牧。{ 松夫への疑惑が確信になったのかも知れない。}
 夜。SRI車がやって来る。牧と野村が乗っている。松夫がギターで弾く『かあさんの歌』が聞こえてくる。{ もう、引き返せない松夫の哀しさが漂う。} 「彼はシロですよ。いつまで張り込むつもりなんですか?」と野村。{ ノムは、松夫が犯人だとは思えないのだ。} 「シロかクロかハッキリするまでだ。」と牧。無線が入る。「先輩。かまいたち方式真空切断装置ができましたよ。」と三沢。「すぐ行く。ノム、見張りを続けてくれ。」と牧。渋々、車を降りる野村。運転して去る牧。寒そうな野村。おでんの屋台を見つけて歓喜し、「こんばんは。がんもとちくわ、ちょうだい。」と、駆けつける野村。{ 軽妙な演技が素晴らしい。松山省二の持ち味だ。}
 SRIの実験室。到着した牧。「どうだね。」と所長。「いやぁ、根くらべですよ。」と牧。「先輩。かまいたち方式を凶器に応用することは可能ですよ。」と三沢。実験装置をのぞく牧。「この中央を事件現場とします。」と、説明する三沢。人形が移動する。「人間が歩いて来ます。一瞬、真空にします。」 緑色の光に照らされた三沢の両目のアップ。三沢がスイッチを入れると、バラバラになる人形。「なるほど。」と牧。実験装置の緑色の光を受けた牧の左目のアップ。{ ここまでやっても、助さん(三沢)の貢献度と言うか、存在感は薄い。この乾いた非情な作品中に居場所がないのだろう。警部、ノム、サー坊は、道化として活躍できてるのだが…。}
 夜道。犬をつれた若い女。例の事件現場で、女はしゃがんで靴を直す。風の音がして、髪が逆立ち、電球が割れる。女は無事であったが、先に行った犬を見て、悲鳴を上げる。{ 女が死ぬと、ノムの立場がつらすぎるので、犬を殺したようだ。}
 牧のアップ。「バカ野郎!」 怒鳴る牧。カメラが引くと野村の横顔。「お前がおでんを食ってる間に、ひとりの人間が殺されかけたんだぞ。」 「すいません。」 「すいませんですむか! せっかく確証をつかむチャンスを。」 三沢も渋い顔をしている。「まあまあ。せめて犬ころだったのが不幸中の幸いだ。」と所長。{ 犬好きの人には耐えがたい台詞かも知れない。ちなみに、惨殺された犬の名は、「コロ」。何気にシャレかっ ( ̄□ ̄;) ちなみに、わたにゃんはネコ派。} 「おれ、分かんないんすよ。何故、彼が犯人なのか。」と野村。{ 実に、いい表情のノム。ノムは、準主役なのだ。} 「ぼくも知りたいな。先輩が、彼の何をつかまえて、犯人と断定するのか。」と三沢。{ 一番影が薄い助さん。} 「まじめで、大人しくて、イタチのようなおどおどした眼をしてて、いつも孤独で…。つまり、何と言うのかな…。」と、独白する牧。聞いている野村と三沢。松夫の写真を取り出すが、「つまり…。」と{ 結局、説明できない }牧。が、「この工場は裏が抜けてる。どっからでもねらえるんだ。そうだ、だから、神出鬼没の作戦が取れる訳ですよ。」と気づき、所長の方に向きあう牧。「牧くん。ここいらで勝負と出るかね。」と、立ち上がる所長。「先輩。やりましょうよ。」と三沢。無言の牧。{ 真実を知りたくないのかも。それとも、危険だと思ったのか??? 多分、前者。} 「先輩!」と三沢。{ この短い台詞が、助さんの頂点。}
 夜。踏切の赤いランプが点滅し、電車が通過。赤いランプのアップの背後に焦点の合ってないさおりの姿。{ わざと、冒頭とソックリの演出。} 地味な黄色の服を来て、不安な表情のさおり。{ かなり危険な作戦だ。犯人が手口を変えたら、助からない。} さおりを追うように姿を見せる所長。後ろをふり返り、急ぐさおり。誰かの影が追ってくる。走るさおり。{ 本当に恐怖を感じてるようだ。} 不安な音楽が、静かに盛り上がる。顔を被った不審な男が資材置場に走り込む。隠してあった何かの機械を取り出す。{ 今まで、機械が見つからなかったのが不思議。} 鋭い眼で、待ち伏せる男。さおりが歩いてくる。スイッチを押そうとすると、「待て!」とSRIジャケットの野村。男はスイッチを入れてしまう。さおりの髪が逆立ち、電球が割れる。バラバラになるさおり。「さおりちゃん!」 驚く野村。逃げ出す男を追う野村。三沢と牧も駆けつける。取り乱し、犯人を殴りまくる野村。止める牧。号泣する野村。「落ち着くんだ、ノム。」と牧。三沢が捕まえている犯人の覆面をはぐ牧。松夫であった。「やっぱり君か。」と牧。無言の松夫。「ちきしょう、殺しやがって!」と、涙目の野村。「バカ野郎、バカ野郎!」と、暴れる野村。「落ち着け!」と牧。{ 被害者の悲しみと怒りを体現して見せるノム。} 現場に駆けつける野村。三沢に捕まったまま、虚ろな表情の松夫。「ノム、待て!」と三沢。地面を動いて行く人の頭部。バッグを持った手も動いて行く。{ 明らかに人形だが、手足の切断面が赤いのが謎。} バラバラになった手足が胴体の方に集まる。訳が分からない野村。涙を流している。{ この辺りのノムの演技は、ほぼ完璧である。} 「ノム!」と三沢(?) 顔の向きとかが不自然なまま合体して、起き上がり、不気味な足音を響かせ、歩行する人体。「吊り人形よ!」と、さおりの声。「さおりちゃん!」と、泣きながら笑う野村。コントローラを持った所長と本物のさおりが現れる。「うまくできてるでしょ。」とさおり。{ サー坊のコミカルな演技が面白い。小橋玲子の持ち味が最高。対照的に、冷静な表情の所長も憎い。} 歩いて行く人形と本物のさおりを見比べ、「ひどい、ひどいよ!」と野村。{ 事件がひとまず解決した安堵感が、一瞬、漂う。} 松夫を連れて、牧と三沢がやって来る。歩く人形を虚ろな眼で見る松夫。左目のアップ。細かく動く眼球。
 青いモノトーンで見下ろす、警部、牧、谷刑事。{ 何故、谷刑事なのか??? 所長やノムの方が良かったと思うが…。} 「理由はなんだ、言ってみろ!」と警部。「残忍な殺しを考えついた理由はなんだ? 他人に怨みでもあるのか? 社会に不満でもあるのか? 言うんだ! 人殺しの理由を言え!」と、怒る警部。{ 小林昭二は、コミカルな役者だと思うが、ものすごく怖い。岸田森も、ほとんど吸血鬼のようだ。まるで、自分が責められてるような錯覚に陥る。} 三人を見上げるカメラが、回転する。「おい、なんでそんな平気な顔をしておるんだ。答えろ!」と谷刑事(??? 警部かも)
 赤いモノトーンの部屋で、ひとり、イスに座っている松夫。「まじめで、大人しくて、イタチのようにおどおどした眼のこの男は、どうして?」 松夫の顔のアップ。牧のアップに切り替わり、カメラが引くと、エンディングの音楽。{ この岸田森の怒りとも悲しみともつかない、不条理な表情は、シリーズ屈指のものではないだろうか??? 牧は、松夫が犯人であったことを誰よりも苦しんでいるのかも知れない。もう二度と笑うことがないであろう松夫と、妙な一体感があるのが不思議。} 紫のモノトーンで、ネガポジ反転し、松夫(?)の細かく動く眼のアップ。


ツッコミどころ

  • 何故、松夫は、4回も同じ場所で犯行に及んだのか??? 警戒されるに決まってるじゃないか。と言っても、警察は遊んでたようだが ( ̄□ ̄;)
  • 首尾良く、サー坊が狙われたのは、話がデキすぎてるが、若い女だけをターゲットにしてた松夫は、やはり変態だったのだろうか??? で、サー坊がタイプだったのかも。
  • 松夫は、家の事情などで大学に行けず、就職したんだと思うが、エンジニアになれば成功したに違いない。惜しい (ノд`)

わたにゃんが感情移入した人物

 小野松夫。根が暗く、影があるところが、わたにゃんに似ている。


ふと思ったこと (*´∀`)

 40年も前に現代を予見した傑作と言われることがあるが、当時も、そのような不条理な犯罪があったのだろうと思う ( ゚∀。) 昔の犯罪は単純だったと考えるのは誤解であり、当時の映画を観れば、複雑な動機の事件をテーマにした作品は少なくない。
 松夫を演じた加藤修は、『キャプテンウルトラ』最高傑作である『ゆうれい怪獣キュドラあらわる』(1967年)にも出演していて、台詞もあるが、やっぱり暗い感じの青年だった。地味だが、印象に残る役者だ (〃∇〃)
 自分が犯罪を犯すハズがないと確信している人は多いと思うが、何が起こるか分からないのが人生である (ノд`)


  Ver. 0.10 2011年08月24日32時09分頃、完了。


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